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こころとからからだの学校

Vol.77

住民健診、大切な自分チェックですよ

20代の家族がいたら、ぜひ子宮頸がん検診を

 さて、梅雨も明けないのに暑さ本番? になってきました。足がつる、朝からだるい、頭痛や吐き気があって熱中症っぽい、などで診察にいらっしゃる方が増えてきています。そんな中、今年も住民検診が始まりました。すでに受けられた検診はありますか。たかき医院でもたくさんの方が子宮頸がん検診に訪れてくださっています。

 さてこの3年間、新型コロナ感染症の流行で病院の受診控えが続きました。そのため多少のことなら様子を見ていました、という方も多いように思いましたが、現場で診察していて特に気になったのは、毎年来ていた検診の間隔を空けてしまっている方が多いことです。

 毎年受けていた子宮頸がん検診を、仕事が忙しいからと1年半空けてしまったらがんが見つかった30代後半の方。人間ドックを新型コロナ流行が始まってから休んでしまっていて、久しぶりに受けたら、血液の悪性腫瘍が見つかった60代の方。検診では無いですが病院嫌いで多少の症状は疲れのせいと様子を見ていたある日、倒れて救急車で運ばれ始めて大きな脳腫瘍が見つかった30代の方。そんな話を最近続々聞きます。

 病院に行くとコロナのクラスターに巻き込まれるから極力行きたくない、という方もいらっしゃるかとは思いますが、実際外来診療でクラスターに巻き込まれたという話はほとんど聞きません。

 この3年間にたかき医院でも、「今日診察した患者さんが家に帰ってから熱が出て、検査したらコロナだったんだって」という話はちょくちょく聞きましたが、それでスタッフが感染したということは一度もありませんでした。とするなら、やっぱり必要な検診は受けに行った方が良いということではないかと思います。

 子宮頸がんにおいては、令和4年度にたかき医院でがん検診をした方が1140人いました。新型コロナが流行する前は1300〜1500名くらいいたことを考えると100〜200人くらいの人は受診控えをしている可能性があります。

また、子宮頸がんは20〜30代の若い方のがんです。令和4年度にたかき医院で子宮頸がん検診を受けた20代の人は222人で、そのうち11人(約5%)が要精密検査になっており、どの年代よりも高かったという結果でした。

 たとえ10代のうちに子宮頸がんの予防ワクチンを受けていても、性行為を経験したら必ず子宮頸がん検診を受けなければ子宮頸がんを100%予防できません。ご家族に20代の方がいらっしゃるようであれば、性行為の経験があるか無いかの確認はできなくても、本人に自身の判断で子宮頸がん検診を受けるように伝えていただけるとありがたいです。

 ちなみに、子宮頸がんの好発年齢である20〜30代の方の住民検診が、どうやら次年度から無料になるようなお話が耳に入ってきており、十日町市はなんて革新的で、若いこれからの人たちのことを考えているのだろう、と感謝せずにはいられません。

 これを読んでいる皆さんの中に、検診は面倒くさいとか、仕事を休まないといけないから無理、と思って受けていない方もいるかと思いますが、もしも受けずにいてあるとき急に大きな病気が見つかった時には、自分のやりたいことも何もかもがすべてが無になってしまうということがあるのですから、進んで検診を受けてくださいね。

 住民検診を受けそびれてしまったとか、ご心配な結果があった時にはいつでもお気軽にご相談ください。

Vol.76

切なすぎる「ワンオペ子育て」

とても大切な周りのサポート

 前回は立ち会い分娩の歴史、そして立ち会うということの意義についてお話しましたね。そのお話の後、立ち会わせていただいた出産の現場に居合わせた旦那さんは、やっぱり見ているだけ写真撮るだけでしたね~。世の中の旦那さんもっと頑張ってください!

 さて、今回は「ワンオペ」という言葉をご紹介します。「ワンオペ」とは、ワン(1人)オペレーション(作業)の略語です。つまり、1人では回らないような作業をたった1人で行っている過酷な作業状況を指します。 

今からさかのぼること20144年、某飲食チェーン店で深夜の労働をたった1人で休憩も取れないような状況で行っていた、24時間以上の連続勤務を数日間連続で行っていた、などといういわゆるブラック企業の「一人ですべてをこなす過酷な状況」が社会問題になりました。

 最近はそこから派生して、結婚していないシングルの人が必然的にひとりで親の介護を担う「ワンオペ介護」、夫婦共働きにもかかわらず子育ては母親にまかせっきりの「ワンオペ育児」も話題になっています。特に「ワンオペ育児」はインターネットで広まり、2017年に流行語大賞にノミネートされました。この辺は田舎だから、3世代なんていう家族も多いし、「ワンオペ育児」なんてこの魚沼地域であり得ない!と思いますか?

 先日、医院で行われた出産前の妊婦さんの教室で、とある妊婦さんがこう打ち明けました。「夫を子育てに巻き込みたいんですけど、どうしたら良いのでしょうか」と。彼女の嫁いだおうちは、お義母さんがガッツでほぼ1人で子育てをしてきたので、お父さんも旦那さんも嫁が一人で子育てするのは当たり前、と思っているとのこと。

 彼女の実家がお父さんをはじめとして誰もかれもが子育てに参加するのが当たり前だったので、今から産後の不安が募るばかりということでした。 

 まさに妊娠初期から見える「産後クライシス(危機)」と思いました。無事に出産したのに子育てを巡って夫婦の仲が決裂し離婚なんてことに?それだけでなく彼女がもしも「産後うつ」にでもなって自殺でもしてしまったら? と話を聞けば聞くほどハラハラしました。 

 旦那さんも元気なご両親もいるのに「ワンオペ子育て」だなんて切なすぎます。それを不安だと相談できない環境はもっと切ないと思いました。

 さらに早産体質の彼女に対して、お義父さんが「最近の妊婦は楽でいいねえ。家業の手伝いもしないなんて。」とポツリ。彼女は普段自分の仕事もやっとの状態です。妊婦さん1人ひとり、当たり前ですが体格や体質が違います。妊娠しても雪かきを平気で出来る人もいれば、自宅で絶対安静となる人もいます。自分の奥さんが平気だったから嫁も何をやったって平気だろう、はとても危ない考えです。 

 この少子化の時代、そして新型コロナのような妊婦がかかれば死んでしまうかもしれない感染症がある中で、未来を創る赤ちゃんを命を懸けて産んでくださるという女性は大事にしなければなりません。子育ては30年、40年前とは大きく様変わりしてきています。

 子育てにおける横のつながりや縦のつながりも薄くなってきています。妊娠出産する女性の体格や体力も変わってきています。それを周りがきちんと知ってサポートしていかなければ、子どもが増えていくことは絶対にあり得ないばかりか、子育てを巡る不幸な出来事が増えていくばかりです。

 どんなサポートができるか知りたい旦那さんはじめご家族の方は是非ご相談くださいね。

Vol.75

本格的な立ち合い出産

立ち合い出産は妊娠中から始まります

 新型コロナウィルス感染症が感染症法上の扱いとして、先月8日に2類から5類になりました。新型コロナが大流行時は、立ち合い出産をすることができず、なんとかならないかとリモート出産を早くから取り入れ対応してきました。その後は亀の歩みでしたが、短時間でも出産の感動をご家族とともにという想いの中、色々な制限を妊婦さんとご家族様に無理をお願いしながら立ち合い出産を行って来ました。そしてついに、たかき医院では数日前より本格的な立ち合い出産を再開しました。

 いまや立ち合い出産はほぼ9割くらいの妊婦さんが希望して行う時代です。日本で立ち合い分娩が広まり始めたのは30年前。それより先に立ち合い分娩が始まったのはもちろん外国です。日本ではしばらく出産の現場は男子禁制でしたよね。

 1948年、お産の痛みの解明に取り組んでいたソビエトの医師たちが、薬剤を使わない「お産の痛みからの女性の解放」を提言しました。「お産=痛い」を私たちは言葉によって固定観念として受け付けられてしまったがゆえに、脳は本能的に危険から身を守るためにお産の痛みに必要以上に過敏になっていると考えたのです。逆に考えれば、お産を正しく理解し訓練することで、お産の痛みは克服できる、と。このソビエトの精神的無痛分娩法が1951年にフランスのラマーズ博士によって改良されたのが「ラマーズ式」。ヒッヒッフーという呼吸法と筋肉のリラックス方法を学んで、お産の痛みを克服するものでした。

 このフランスのラマーズ式は主に助産師がサポートする自然分娩法でしたが、ヨーロッパへ普及した後にアメリカへ伝わって、夫が妊娠生活・分娩・産褥への理解と参加を勉強したうえで出産サポートをするアメリカのラマーズ式へと変化していきました。

 つまり立ち合い出産というのは外国では、①妊娠に対する正しい認識と理解、②妊娠中の合併症を予防するためのサポートとケア、③分娩への正しい理解、④そしてこれらの実践の4つの項目をクリアできなければ立ち合い分娩はさせない、というのが常識。ただ突っ立って見ていて、出産の様子を写真や動画に収めるためにいる、これは立ち合い出産ではないのです。

 飲み物や食べ物を運んだり口にさせたり、声をかける、背中や腰をさする、呼吸をリードする、などをして妊婦さんが「お産=痛い」からうまく回避し、上手に分娩が進むようにサポートするのが立ち会う人の役目だということを肝に銘じてください。

 新型コロナ流行前の話ですが、何度か「妻がこんなに苦しんでいるんですけど、どうにかならないのですか?」と、どなられたことがありました。こちらの落ち度もたくさんあり申し訳なかったと思っています。

 しかし、これから立ち会われる方には尋ねたいと思います。お産が始まったらお腹や腰が痛いのはなぜなのか、それをどうしたら和らげることができるのか、苦しみを和らげるためにどんなことを知っておいた方が良いのか、それを実践するためのコツは何か、自分たちはどう実践するのか、苦しいのは出産の時だけなのか、夫婦で協力する妊娠出産、子育てとはどういうことなのか、を妊娠中からご夫婦で話し合いましたか? それらを教えてくれる教室などには参加されましたか? と。

 立ち合い出産は妊娠中から始まります。どうぞこれを機会に夫婦で普段からたくさん色々なお話をしてみていただきたいと思います。いつでも相談に乗りますからね!

Vol.74

繰り返し起こるDV、すぐに相談を

自分が変わることで解決する問題ではない

 前回DV(身近な人からの暴力)ということで、彼氏彼女間の「デートDV」についてお話しました。もともとDVをする人は「緊張期(蓄積期)」「爆発期」「解放期(ハネムーン期)を繰り返すという特徴があります。

 緊張期というのは、ストレスや不満などを溜め込み、暴力や暴言をするためのエネルギーを溜め込んでいる期間のことです。イライラを募らせることで次第に感情のコントロールが出来なくなり、些細なことでカッとなってしまったり、怒りも爆発させてしまいます。DVを受ける側としては、「いつどんな理由で相手が怒るかわからない」という漠然とした不安に苦しめられます。

 溜め込んだストレスの限界が来ると、突然に暴力を振るい始めるのが「爆発期」です。多くは突発的で予測は困難であり、暴力の衝動を抑制できなくなっているので大変危険です。

 相手の態度や行動、自分の身の回りの状況が自分の思い通りにならないストレスを発散している期間で、さまざまな暴力を駆使して相手を自分の思い通りに行動するように強要し、この後も思い通りにコントロールしやすいように恐怖心や無力感を植え付ける期間です。

 そして、暴力によってストレスが発散され、比較的安定した精神状態となる「解放期」がやってきます。ストレスが発散された事により、優しくなってプレゼントなどを買ってきたり「二度と暴力は振るわない」と約束したり「俺が悪かった」などと泣いて謝罪したりするのでハネムーン期とも呼ばれています。しかしいずれ次の暴力に向かってストレスを溜め込んでいく蓄積期に移行していきます。

 このサイクルの中でDVを受けている側は、自分が好きになった人だし、暴れている時が異常で本来は優しい人、自分がそばにいてあげないといけない、自分が立ち直らせる、と思ってしまいがちです。

 それと同時に、自分がだめだからこうなってしまうのだ、自分が耐えればいいんだ、何をしても無駄だ、これはただの痴話喧嘩で他人に言うほどのことでは無い、とも思うようになり、DVから逃げようとする気力さえ消えていくといいます。肉体的な暴力であれば、命に関わることにつながりかねないので、常に殺される恐怖が生じるでしょう。では、精神的な暴力はどうなのか? 

 たとえば、頭にくると目の前で物に当たり物を破壊するなどを見せつける、というこの行為も、いつか相手を怒らせたときに自分は(あるいはその場に一緒にいる誰かが?)殺されるのではないかという恐怖が生じるに違いありません。

 もしもその場に子どもがいて状況をたびたび見聞きしていたら、そのストレスで子どもの脳には萎縮や変形などが生じ、将来のうつ、アルコールや薬物依存、自殺企図、薬物乱用などを引き起こすリスクが高くなることが分かっています。

 もしもこれを読んで、自分はDVを受けているのではないかと感じた方がいたなら、自分が変わることで解決する問題ではないと知ってください。早く相談窓口に相談すること、あるいは専門の施設に保護をしてもらうこと、あるいは警察への通報も考えてください。それは分かっているけど自分ではどうにもならない、という方はぜひお気軽にご相談くださいね。

「性の話しは子の目を見て、正直に話す」

たかき医院・仲栄美子医師、小中高で講演 
「自然なことなんだよ」、日頃の積み重ねが大切 

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 「日本は先進国といわれるが、性教育、お金の教育はほとんどやらない。性教育はある程度の年齢になれば子どもたちに伝える必要があります」と市内外の小中高校などで性教育講演を行っているたかき医院・仲栄美子医師は、幸せに生きるためにも性教育の必要性を強調した。

 津南小学校で先般行ったPTA講演会の講師に招かれた仲医師。世界で取り入れられている『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、5〜8歳で男女の体の区別を知り、9〜12歳で性と生殖に関わる器官の仕組みを学ぶ目標があるとし「月経、勃起、射精は自然のことなんだよ、と知って貰いたい。無防備な膣内性交は妊娠や性感染症になる可能性が高まり、意図しない妊娠を防ぐというのを9〜12歳で伝える」とし、性教育を行わないことが性犯罪の原因の第一であり、無責任・無関心に繋がるとする。さらに「今は小学3年で初潮が来る子もいます。この時点で教えられていないとすごく恐怖を感じるもの。怖くて学校に通えなくなったケースもあります。小学3年ぐらいからナプキンを用意した方がいい」。

 保護者からの事前質問にも回答。『子どもにセックスは絶対必要かと聞かれたらどうするか』には「生理やセックスは恥ずかしい話しじゃない。命が誕生する、とっても大事なこと。変にごまかすより、正直に話した方がいい」。あるいは『性の話をするタイミングを知りたい』には「性教育は生まれた瞬間から始まり、日頃の積み重ねが大切。大事な所はきちんと話すべき。まず子どもを認め、愛していると伝え、短時間でいいので子の目を見て話す時間を作って欲しい。女の子なら月経が始まったら教えてもいいと思う。小学生のうちからあえて話を出して」。一方で国の学習指導要領は「中学校ではセックスの話が出せない、とある。やはり本当に大事な部分は家庭で伝えていく必要がある」とした。

 ワクチン接種により防止できる子宮頸がんも解説。日本では1日約10人が亡くなり、約83人に1人が発症しており20〜30代で増加傾向。「子宮頸がんは性感染症。男の子の性器に多くいる。仮性包茎の皮と亀頭の間の部分にウイルスはいる。男の子は将来愛する人のためにきちんと洗ってほしい」。セルフプレジャーは「何回でもしていい。男の子は性欲が強くなるので必ずやって下さい。女の子はしたければやる。よいセルフプレジャーした方が、よいセックスができるというのが研究で分かっています」などと解説していた。

​写真=性教育の必要性を語る仲医師(津南小で)

(詳細は2023年5月13日号をご覧ください)

仲講演
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