
2020年10月
2020年10月31日(土)

今季2匹目のサケを確認する宮本理事。「本当に愛おしいね」とすぐに上流の魚道に放流した(右、16日朝、西大滝ダム魚道で)
サケの「食文化」再興を
採捕時間限定で上流遡上を
◎…連日、西大滝ダム魚道にもサケが帰って来ている。地元高水漁協が遡上確認を行い、今期の初遡上は今月15日。以降連日遡上を確認し、28日までに25匹が遡上。25日には一日の最高5匹を確認している。下流の宮中取水ダム魚道は28日までに918匹で大きな開きが生じているが、中魚漁協では「宮中ダムから上流には清津川、中津川、志久見川があり、それぞれ遡上しているようだ」と見ている。同漁協は県知事認可で採卵・稚魚育成のための採捕許可を受け、宮中ダム魚道で採捕している。今月20日時点で339匹(メス128匹、オス211匹、20日時点遡上数689匹)を採捕し採卵事業に取り組んでいる。
◎…西大滝ダム魚道で10年間、遡上調査の確認作業にあたる高水漁協・宮本惣次理事(82・飯山市)は初遡上の翌16日、オス75㌢、4㌔の元気なサケを見て話す。「よくぞ帰って来てくれた。本当に愛おしい。今年は長野県で放流の稚魚がそろそろ帰って来る年だけに期待している。元気に跳ねるサケを見ると本当に嬉しい。来月10日まで何匹見られるか、期待している」と感慨深く話している。
◎…一方でサケの「食文化」の復活をめざす動きもある。中魚漁協・村山組合長は、古来から妻有地域の信濃川流域ではサケの「食文化」があったことに着目。新たなサケの食文化の構築に取り組んでいる。「かつてのサケの食文化を復活させたい。ここ妻有地方ではサケを食する文化があり、サケが獲れなくなり廃れてしまった。だが、河川環境が良くなり、今年も千匹に迫るサケが上がってきている。採捕による採卵、稚魚放流の循環が必要だが、遡上してくるサケの活用も考えたい」と話す。さらに「今期、試行的に取り組んでいることがある。サケの遡上による地域住民の関心を高め、さらにかつてのサケの食文化を復活させ、それをさらに河川環境の改善と保護につなげていきたい。その循環が地域の河川への関心をさらに高めることにつながるはず」と話しており、冬季を活用し、試作品づくりに取り組む計画だ。

関口市長や桑原町長ら魚沼5首長と花角知事が意見交換(22日、ベルナティオで)
高校再編、県教委に知事進言を
魚沼エリア知事懇談会 津南中等校・松之山分校にも言及
知事と市町村長が直接意見を交わす魚沼ブロック懇談会は23日ベルナティオで開き、魚沼エリア5市町長と花角知事が出席し意見交換。懇談は非公開だったが、1時間半の予定が30分余り延長するなど活発なやり取りがあったという。この日は県立津南中等教育学校、県立十日町高校松之山分校の存続要望を求めた。花角知事は「ICT活用で教育が変わっていくのでは。新型コロナでオンライン授業が普及。少人数学級でもICT活用で質の高い教育を実現できるのではないか」と見解。一方で「大勢の中で共同作業する、例えば部活などは小規模校では難しい。そうした社会性を鍛える教育をどうするかはまだまだ議論すべき所はたくさんある」と課題の一端を述べた。
知事と首長の懇談会は3年前から県内5ブロックで継続し行い、県庁職員が同席し傍聴する形を取る。終了後、関口市長は「それぞれの首長が言いたいことを言った。花角さんになりコンスタントに懇談会を開くようになったのは凄い変化。県幹部が出た意見をちゃんとフィードバックしてくれるのは信頼感が高まる仕組み」と評価。懇談では松之山分校と津南中等校の存続について意見したことを明かし「あえて津南町長がいる前で話をさせて貰った。県においても総合教育会議というシステムがあり、知事も教委に物申すことができる立場でもあると確認できた。知事の考えをしっかり聞き、それが教育行政にどう反映されるか興味を持った」と話した。
一方、桑原町長は同日午後に沖ノ原のスマート農業実証実験地を花角知事が視察したことを話し「高齢化や人手不足の問題がある農業。だが津南町には県目標の園芸1億円産地増に向け優良農地があり、魅力ある農業作りへさらに協力をお願いした」とする。津南中等校など中山間地の教育環境維持については「魚沼の地域で頑張りたいと言う子どもたちのため、教育の可能性を残したいと伝えた。医師不足の地域だが、医師を輩出できる質の高い学校教育が実際に行われている。魚沼地域全体の教育力を高めるためにも必要と話した」と要望を含む懇談内容の一端を語った。

密を避けての防災訓練でエコノミー症候群防止体操を行う外丸地区民
外丸地区 「密」を避ける防災訓練
笹沢少年消防クラブや「黄色いハンカチ防災」など妻有地域で先進的な防災活動に取り組んでいる津南町の外丸本村地区(約130世帯)で25日、震度6強の地震発生を想定し新型コロナ対策を重視した防災訓練を実施した。
新型コロナの影響で「密を避ける」など防災訓練も難しさを増しているなか、同地区では防災委員らが避難先の集落センターや旧小学校に避難してきた全員の体温をチェック。「寒気やだるさはありませんか」など18項目に渡る『新型コロナチェック』を実施し、発熱のある模擬対象者は避難者から隔離したほか、地区民が集まった体育館でも密状態を避ける分散避難を行った。
訓練担当の涌井稔章さんは「難しい訓練だったが想定通りにでき、万一の時に生かしたい」と話た。会場では他に少年消防クラブによる心肺蘇生訓練や、避難先で長時間座って足を動かさないことで血液が固まりやすくなるエコノミー症候群の予防体操なども実施した。

縄文村で行った第1回つなんプレーパーク
第1回つなんプレーパーク
津南で思い切り遊ぼう—。自然のなかで子どもたちが思い思いに好きなことを楽しむ時間を作る、第1回「つなんプレーパーク」は先月22日、町なじょもん縄文村などで開催。親子連れなど40人余が参集。ノコギリを使い枝を切る工作、焚き火でのマシュマロ炙りや芋を焼く火遊び、自由に広場を走り回るなどし、子どもが自ら遊びを選び作る環境で秋の一日を過ごした。
企画したのは共に幼い子を育てる江村大輔さん(巻下)とグリフィス恵さん(陣場下)。先駆的な取り組みをしている世田谷・羽根木や新潟市のプレーパークを視察するなか「子どもたちが自分の責任で自由に遊ぶ環境を津南でも作ろう」と2年前から構想。新型コロナ禍で一般参加呼びかけは難しかったため、それぞれの友人知人にSNSを通し連絡し参加を募り初開催。「羽根木プレーパークでは子どもたちは泥だらけになりながら遊んでいた。でも津南では良い環境はあるのに意外と外遊びを楽しむ機会が少ない。子どもたちのため、親のためにも今後も続けたい」と月1回程度の開催を模索する。協力者も随時募る。
≫どうする「核のゴミ」、来月15日講演会
≫新潟県にも防災条例を 小山県議が県政報告会で
≫予約システムを導入 清津峡渓谷トンネル 11月から施行、来年4月実施
≫自主防災、原発事故に備える UPZエリア下条地区で 防災無線で避難訓練、連絡網確認など
≫「山塩」、創業プラン審査でグランプリに
≫サケが来た 飛渡川、地元小学生も
≫新型コロナ対応支援、市観光協会事業
≫名器ベヒシュタイン、段十ろうで利用解放
≫「こんにちは」「你們好」三箇地区・台湾 新型コロナ禍でウェブで交流継続
≫ワクチン摂取料、全村民に助成
≫「口腔ケア大事」村健康増進講演会 オンラインで初実施
≫きら星・伊藤社長が移住戦略講座「ターゲット明確化を」
≫貴重種シロマダラ 秋山郷で偶然発見 夜行性、目撃例少ない
≫地域特性を明確化へ 桑原町長、年度内にWS開く方針
≫「書面なしで譲渡」、不可解さ増す 公社備品問題、村課長級職員 懲戒委で処分方針
≫100キロ過酷レース 苗場山麓ウルトラマラソン、過去最多の300人出場
≫「これはラクで最高」 秋山Goサイクリング、電動アシスト車で巡る
■好評連載
≫<新米ママ子育て日記457>「言葉遣い、いろいろです」
≫<神無月の表情>「おはよう・小中あいさつ運動」(十日町)・「みんなすごいねぇ・第36回町芸能フェス」(津南)
≫<本って最高・高橋しげ子218回>「ルドルフとノラねこブッチー」(斉藤 洋 作・杉浦 範茂 絵・講談社)
≫<野の花 不登校・ひきこもり達へのエール37回 樋口 清司>「自分で決める。焦る必要はない」
≫<とっておきの私の山行>関澤 慶春さん 「南アルプス5泊縦走」
≫<マイふぁみりー>「マイペースのチョコ」水落 友章
≫<小宮山雅志の思い出雑記帳26>「コメツキ虫」
≫<私の名作めぐり・庭野三省282>『啄木歌集(岩波文庫)その③』
ほか
2020年10月24日(土)

住民6355署名を提出の佐藤会長(中央)、受け取る藤山局長(左)。21日県庁病院局で
「知事、グランドデザインを」
県立松代病院問題
存続署名6355名提出、関口市長「新たな競技の場を」
国の医療機関再編に上がり、県が進める県立病院再編で地元自治体主体の運営が示されている県立松代病院の県立県営での存続を求め、地元松代・松之山など旧東頚地域が今春から取り組んだ「存続署名6355人」を地元代表者と関口芳史市長は21日、花角知事あての署名簿を県病院局・藤山育郎局長に手渡し、「県立県営での存続を強く求める」と直接要望した。地元まつだい地域振興会・佐藤實会長は「少子高齢化のなか県内屈指の条件不利地域であり、民間医療機関の参入もままならなず、他の医療機関へ行く交通手段もない地域と、利便性の良い他の所とを同じ土俵に上げないで議論してほしい」と切実な地域事情を訴えた。同行の関口市長は「昨年末も訪れたが、市と県の議論が深まったとは到底言えない状況であり、松代病院の問題を含め、圏域の医療と介護の体制をしっかり詰める新たな協議の場が必要と考える」と、新たな県と市との協議の場の必要性を示した。
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署名運動は4月から始め6月にはまとまっていたが、新コロナ自粛で直接要望を先送りし21日ようやく実現。今回は旧東頚地域7398人(松代2915人・松之山1584人・大島1415人・高柳1222人)に加え仙田地域(542人)の5地区で取り組み、同住民7940人に対し6355署名、80%を超える住民が賛同し、関心の高さを示している。
署名趣旨は「県営から十日町市主体の運営を前提に協議が進むことになり…山間へき地に暮らす私たちにとって、とりわけ高齢者は大きな生活不安を抱く。私たちの血の叫びを県知事に訴え、県立県営での存続を強く訴える」と切実な地域事情を訴える。
署名提出には地元から佐藤会長、松之山自治振興会・樋口一次会長、両会事務局の武田芳夫局長、中島一男局長の4人。市から関口市長、鈴木部長、樋口、福原両支所長。尾身・小山両県議も同席。佐藤会長は「我々が暮らす地は県内屈指の条件不利地域であり、民間の医療機関参入はままならないなか、松代病院は県立県営でなんとしても存続をしてほしい」と繰り返し切実に訴えた。
これに対し上越市出身の藤山局長は「この問題はまだ緒についたばかりであり知事も話している通り、地域の了解がない中での、県の一方的な都合で対処することはあり得ないことであり、皆さんと引き続き様々な議論を重ねながらより良い方向性を探っていきたい」と話した。冒頭5分以降の懇談は非公開となったが、佐藤会長は「局長から明確な回答はなかったが、我々が県庁に持ってきた地域の思いを真摯に受け止めますという言葉が聞かれ、もやもやが少しは取れた思いだ」と取材に答えた。松之山・樋口会長は「今後は県と市とのキャッチボールで検討を進めるという言葉を聞きで、地元の皆さんに報告したい」と話した。
一方、関口市長は昨年末の訪問以降、進展がない点にふれ「県から医療と介護の連関が重要という指摘があったが、昨年末以降、これまでに市と県の議論が深まったとは到底言えない状況である。今回の要望を受けた県の意見と、我々がそれをどう受け止めることができるか、今後キャッチボールの頻度を上げ、議論の熟度を高めていく必要がある。新コロナのせいかどうか、この1年間の議論はほとんど進んでいないというのが事実。ペースアップできると思っている」と話し、「松代病院の問題を含め圏域の医療と介護の体制をしっかり詰めていく、新たな協議の場が必要と考える。知事含め、大きなグランドデザインを県が示すことが必要ではないのか。それが地域住民の第一の安心につながると病院局長にお願いした。知事からお答え頂きたい」と地元行政トップとしての姿勢を示している。

畑に現れたクマ(9月5日、倉俣・大中田で、十日町市提供)
