
2020年3月
2020年3月28日(土)


東京五輪、1年延期、来年夏までに
服部勇馬「全力出す準備を」
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック・パラリンピックは2021年の夏ごろまでに1年程度、延期されることが決まった。こうしたなか、札幌で開かれる男子マラソンに出場する服部勇馬選手(26、トヨタ自動車)は25日午後3時過ぎ、本紙の電話取材に応え、同陸上部を通して「本番で全力を出し切れるよう準備していきたい」とコメントを寄せた。
この中で服部選手は「世界が新型コロナウイルスの影響で深刻な状況のなか、オリンピックの舞台で競技できる機会をいただける事に感謝しています」としながら「これからも変わらず、本番で全力を出し切れるよう、準備していきます。1日でも早い、コロナウイルスの終息を願っています」と改めて決意を示した。服部選手は今後、ハーフマラソンや駅伝出場などを通して五輪に向けた調整を続けていく方針だ。
また、佐藤敏信監督も本紙に「現状のコロナウイルス感染拡大のなか、中止の判断がなされなかったことに感謝し、これからも今まで通り、本番にベストの状態で臨めるように努力していきます。感染拡大が、早期終息することを願っています」とコメントしている。
関口十日町市長は25日、五輪延期について「クロアチア共和国選手団の事前キャンプ受入れの準備を進めて来た。今回の延期を受け、今後どのような時期でも選手たちが最高のパフォーマンスを発揮できるようにリスタートしていく。マラソンの服部勇馬選手や桜花レスリング道場で合宿した女子レスリング代表選手など、すでに代表権を獲得した選手が、その権利を失うことなく万全のコンディションで大会に臨んでほしいと思う。国際オリンピック委員会が早期に開催時期を示すことを期待したい」とコメント。また服部選手の市民応援団・援馬隊の吉楽一彦隊長は「服部選手が苦労してつかんだ出場権、そのまま継続されることを願う。応援する気持ちは変わらない。この1年、さらに盛り上げていきたい」と話している。
服部勇馬応援ツアーを計画し準備を進めていた共立観光では「打撃は大きいが仕方ない。計画の練り直しになる」と落胆している。同社では、新型コロナによる観光旅行のダウンや修学旅行の延期に続くダブルパンチ。応援団ツアーは飛行機で約50人、フェリーで40人余りの参加が予定されていた。
クロアチア選手、混乱なき受入を 十日町市
東京オリ・パラに参加するクロアチア共和国の事前キャンプを受け入れる十日町市。今夏の本大会に向け選手が宿泊するホテルや練習会場となる中里アリーナなどの施設に仮予約していたが、1年延期の方針を受けキャンセルした。
またクロアチアでは、出場選手の選考が競技によっては5月頃になるとしているほか、実際の事前キャンプは競技本番の2週間前頃との事前打ち合わせがあり、対応に当たっている市スポーツ振興課では「事前キャンプなどの日程が決まっていたわけではなく、大きな混乱はない。来年に向け準備を進めていきたい」としている。
市は一昨年11月、クロアチア・オリンピック委員会と事前キャンプに係る協定書に締結。昨年8〜9月にはテストイベントに参加する柔道や空手、テコンドーの選手団が来市、中里アリーナなどで練習に取り組んだ。

春耕の水田は水鏡となり景色を映し込む(津南町沖ノ原から中津川を望む、内山義幸氏撮影)
実証実験、米食味向上に挑む
河岸段丘の水田15カ所、国際大会に出品 津南町3年継続
小学校の社会科教科書で紹介された津南町の「河岸段丘」。信濃川と中津川、清津川、さらに志久見川の4本の1級河川の浸食と隆起で誕生した階段状の自然のテーブル大地は国内有数の規模。標高2百㍍前後〜6百㍍余の段丘面に水田など耕地が広がる。津南町は2020年度から3年間、自然の特性である段丘地におけるコメの食味向上の実証実験に取り組む。 実験の収穫米は毎年末に開催、米・食味鑑定士協会主催で毎回6千点近く出品がある国内最大の『米・食味分析鑑定コンクール国際大会』に全品を出品する。数値で行う公正な審査で、第三者的な視点での評価や改善点が分かり、今後の津南米づくりの貴重なデータ収集にもつながる。3年後、同コンクール国際大会は津南町開催が決まっている。同コンクール最高賞・金賞をめざす取り組みを契機に「津南のコメづくり機運を高めたい」とすると共に、「コメどころ津南を、さらに全国や世界に発信する好機」と捉え、農業者の果敢なチャレンジを期待し、町は新年度予算で支援する。
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津南町の水田は約1430㌶(酒米含む)。河岸段丘は、春の田植え期、水田の水鏡が残雪の上信越の山々を映し込み、夏には緑の大地に姿を変え、秋は一面の黄金色に。まさに「恵まれた自然が作り出す津南米」。さらに食味向上をめざし「津南米・食味向上プロジェクト」に取り組む。
米・食味分析鑑定コンクール国際大会。昨年11月、千葉・木更津で第21回を開催。2022年・令和4年、津南町開催が決まっている。今回のプロジェクトは同コンクールを生産者意識を高める好機にしたい考え。目標はコンクール金賞受賞者を津南町から誕生させることだが、町は「国内最大のコンクールという評価の場は、これまでの米づくりの検証にもなり、課題や改善点を考える場にもなり、なによりも生産者のコメづくりの意識と関心を高める好機になる」(地域振興課)と見ている。
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昨年4月、津南町は「農業のプロを」と新潟県の職員派遣を受けた。津南など妻有エリアの農業を知る村山大成参事(前県農林振興部課長)が着任。就任時「県とのパイプ役として農業者所得の確保と向上が求められる役目を感じている」と抱負。花角知事の園芸1億円産地づくり農政につなぐ取り組みで、就任時から米づくり品質向上に取り組み、今期は同プロジェクトと共に園芸スマート農業化にも取り組む方針。昨年から町・生産組織・営農団体と構想を進めた一つが同プロジェクト。
計画では町内米集荷5事業所の協力を受け、「標高3百㍍未満」「3百㍍〜450㍍未満」「450㍍以上」の各5ヵ所、全町15ヵ所を選定。各農業者の米づくり手法の提出を受け、地域振興課(4月から農林振興課)で調整し実証水田を決める。
米づくりは各農業者の従来方法となるが「津南町の一般的な米づくりの方法」を目安に行う。種籾(もみ)は通常の津南産を使用。一般的な農法のほか減農薬・減肥料、有機栽培などにも取り組み、中間管理は各農業者の取り組みに委ねる。だた「極端な作り方や肥料の大量投入などは行わず、あくまでもスタンダードな作り方で」。15ヵ所の水田は10㌃〜30㌃程度の広さを選定し、津南の平均的な立地と水路確保として「できれば3年間、継続して同じ水田で実証実験したい」とする。
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プロジェクトは3年間の継続事業。15ヵ所の実証水田で取れたコメはすべて食味分析鑑定コンクールに出品する。今年末には2022年の本番を前に「津南町米・食味分析鑑定コンクール」をプレ大会として行う。年末の国際大会結果に基づき、町内出品の上位者を選出し、町独自の食味審査で金賞・特別優秀賞5人を決める。
津南米・食味向上プロジェクトに取り組む村山参事は「若い農業者が育っている津南町の米づくりを、さらに伸ばす契機にコンクールはなる。コンクール出品で克明な分析データを得ることができる」と話す。3年継続で取り組む実証水田のデータが今後の津南米づくりの指針になり、コンクール開催を全国発信の好機につなげたい考えだ。 町は新年度予算で15ヵ所の支援金45万円、さらに今年末のコンクール出品料補助40万円(200出品想定)を予算化している。
木質バイオ発電、森組と連携へ
間伐材供給、十日町森組、津南町森組が協定書
再生可能エネルギー事業の木質バイオマス発電分野が、地元森林組合の経営と大きく連動する形になってきている。十日町地域森林組合は21日、事業決算・新年度事業計画を決める第16回通常総代会をクロステンで開いた。任期満了に伴う役員改選で新たにトップに就いた太田耕司・代表理事組合長。総代会翌日、取材に答え「安定的な木材供給先が市内にできる。事業化へ連携していく」と話し、1年後に発電稼働を計画する現地法人・十日町バイオマス発電所と協定に基づく事業連携の運営方針を示した。一方、22日に第53回通常総代会を開いた津南町森林組合は昨年9月に十日町バイオマス発電所と木材供給の協定書を交わし、具体的な供給量と価格方針を結んでいる。涌井九八郎組合長は「他の事業体からも話を受けているが、FIT(固定価格買取制度)認可を優先することになるが、木材提供には将来的な課題が併存している」と、取り組む森林整備との関係性を指摘する。これまで関心が薄かった間伐材など未利用材が、バイオマス発電事業で取引対象の「山の資源」になっており、地元森林組合の運営にも影響し、森林事業は新たな時代に入っている。
木質バイオマス発電事業は、その使用木材によってFIT価格が違う。森林整備に伴う間伐材は国規定で「未利用材」に区分され、同材での発電は「1KWh40円」の固定買取。立木補償など間伐材以外の自然木は「一般材」、さらに建築材などによる発電買取は間伐材の半分程度になる。
このため木質バイオマス発電事業者はFITが高い間伐材供給を求めるが、森林整備事業との関連が出てくる。間伐材は新潟県認定の『林業認定事業体』が発行する証明書が必要であり、妻有地域では十日町地域森林組合、津南町森林組合のほか十日町市内で民間2社が同認定事業体の認可を受けている。
十日町地域森林組合は小千谷森林組合と合併で誕生、今期で17年目。同組合と昨年4月、原木供給協定書を締結した『合同会社バイオマス発電所』は、市内四日町地域の信濃川河畔にすでに用地取得し、FIT認可を今月13日に受け、東北電力への系統接続が可能となり、今春から事業着手し、1年後の発電稼働をめざしている。
使用する原材料木は約2万3千㌧を見込み、近隣や県内、福島などから調達する意向だ。十日町地域森林組合は協定書の中で年間約3千㌧(本格稼働時)を見込む。取引価格は協議中だ。同組合は市主導で、民間事業者が建設、運営するキナーレ・木質バイオマス発電の熱電供給事業に原材料木年間千㌧を供給するなど、「森林資源、目算100万㌧」の十日町地域の森林資源の有効活用を視野に入れている。太田組合長は「木質バイオマス発電は向こう20年間が約束されている事業。木材供給先が確保されることになる。森林所有者への還元にもなり、森林整備と連動した山林資源の有効活用につなげたい」としている。

十日町地域森林組合、役員改選の総代会(21日、クロステンで)
「安定的な木材供給」、発電事業と連携
新森林管理システムと木質バイオマス発電と
十日町市と小千谷市、長岡市川口地域が合併して2004年(平成16年)2月に誕生した十日町地域森林組合(組合員2649人)。第16回通常総代会を21日、十日町クロステンで80人余の総代が出席して開催。任期満了に伴う役員改選で新理事10人、監事2人を選出し、同日午後の理事会互選で太田耕司専務(65)が4代目の代表理事組合長に就任した。今期で退任の星名敏雄組合長は、森林環境税導入に伴い森林環境譲与税が自治体に交付され、十日町市では森林所有者の意向調査などに取り組んでいる状況を説明し、「令和新時代に対応できる新たな体制で森林組合事業を切り開いてほしい」と新体制執行部にバトンを託した。
同組合の売上の主体事業は食品加工の約2億3453万円(全売上比率58%)。山菜加工主体に大手スーパーなどと取引し、今年2月には衛生管理の世界標準HACCP(ハサップ)認証を取得し、今期は「五輪需要」を見込んでいたが、ここにきて新型コロナウイルス感染拡大で五輪開催が延期される公算が濃厚で、販売戦略の見直しにも迫られそうな状況だ。
一方、国の森林経営管理法に伴う「新たな森林管理システム」の策定により、その事業体として昨年11月、県知事認可を受けたことで今後、地元十日町市と連携した森林整備事業に森林環境譲与税などを活用して取り組むことになる。今期は森林所有の意向調査を行い、森林整備を計画的に取り組むことになる。さらに市内四日町に建設計画の「十日町バイオマス発電所」への原材料木の供給にも取り組む。すでに昨年4月、協定書を交わし、年間3000㌧を供給し、発電事業との連携を進める方針だ。
4代目組合長に就いた太田耕司組合長は就任後、取材に対し、「今期は森林整備にあたり森林環境税、森林環境譲与税が本格スタートする。地元行政と連携を密にしながら、効率的な森林整備に取り組みたい。5年前から事業構想が始まっている木質バイオマス発電事業は組合の大口取引先となり、事業推進は組合の販路にもつながると方針を話す。

書面決議で出席29人で開いた総代会(22日、津南町森林組合で)
20億円目前、日本食研取引で
津南町森林組合総代会 ストック倉庫3億円で建設
新コロナウイルスの感染拡大予防で総代の65%の書面決議で開いた第53回津南町森林組合総代会は22日開催し、前年度総取扱額25億4152万円(事業総収益22億6999万円)による当期剰余金2739万円の前年度決算を承認した。
総代会は総代200人うち例年180人余が出席するが、今期は感染予防から書面決議出席の形で総代会を開き、本人出席29人に対し書面決議129人となり、会場は当日出席者のイス間隔をあけるなどして開催。来賓は招かず議案説明も部分簡略。提案議案は原案通り可決した。
質疑に答えた涌井九八郎組合長は、十日町地域で計画が進む木質バイオマス発電にふれ、「十日町バイオマス発電所はすでにFIT固定価格買取制度の認可が下り、間伐材の買取りになるが、依頼があれば対応したい」とバイオマス発電に間伐材提供の考え方を示している。
53期の事業決算では、日本食研との事業取引が18億円を上回り、組合の売上ベースでは全体の80・47%を占めるなど、日本食研との取引実績が組合運営の主体を成している。日本食研との実績では「取引20億円達成」を目標の一つにしており、来期の目標は18億7700万円で、目標達成まであと一歩となっている。なお、前年継続事業でストック倉庫(建坪646平方㍍、高さ17㍍)を3億円で建設、9月供用開始する。
成人式も延期、9月20日開催
入学式も時短、関係者だけで
毎年5月3日開催の十日町市と津南町の成人式は新型コロナウイルス感染拡大の予防から両市町とも9月20日(日曜)に延期することになった。十日町市は23日の市新型コロナウイルス感染症対策本部会議で決めた。
十日町市の該当者(平成11年4月2日〜翌年4月1日生まれ)536人(男254人、女282人)で段十ろうで開催。同対策本部は例年480人余の出席者のうち330人ほどが市外から参加のため、感染拡大の懸念があるため延期を決めた。新市になっての成人式延期は初めて。
津南町の該当者は90人(同、男44人、女46人)。会場はニュー・グリーンピア津南。開式は午前10時20分で開く。
新学期が目前のなか新型コロナウイルスの感染拡大に続き、十日町市・津南町・栄村では例年通り入学式を行うが、多くが来賓を招かず、時間短縮規模縮小で開催する。
十日町市は8日、小学校(18校)は午前、中学校(10校)は午後に入学式を開催。特別支援学校ふれあい校は10日に行う。来編出席はなく入学生・保護者・教職員だけで開催する。
津南町は8日、午前に小学校3校、午後に津南中学で行うが、同様に来賓出席はなく、入学生・保護者・教職員だけで行う予定だ。
栄村は6日、午前に栄小学校、午後に栄中学校の入学式を行い、同日、始業式も行う予定。来賓は村長だけで入学生・保護者・教職員だけで行う予定だ。
県立高校は6日に十日町、十日町総合、松代、津南中等、7日に十日町松之山分校、同定時制、8日は川西支援学校で行い、入学生・保護者・教職員だけで行う方針だ。

校舎入り口に並んだ十日町市で最も少ない鎧島小の卒業生3人の親子ら

きもの姿にマスクで式に臨んだ十日町小の卒業式
3人だけの卒業生、きもの姿も
雪が舞うなか小学校で卒業式
妻有地域の小学校では24日に卒業式を行い、卒業生は6年間の思い出を胸に学び舎を巣立ち、中学校進学に胸を膨らませた。新型コロナの影響で一斉臨時休校となり、ほとんどの学校で「6年生を送る会」などができなかったなかでの卒業式。当日は突然の雪模様となり、雪国ならではの雰囲気となっていた。
「夢に向かって歩んでいきます」—。十日町市内の小学校で最も卒業生が少ない鐙島小(細木久成校長)では、3人が思い出いっぱいの学び舎に別れを告げた。同校では初となった複式学級で6年間を学んだ3人。「ひまわり学年」として今年度は下級生と協力して学校行事を進めてきただけに、別れの日は在校生から大きな拍手を受けていた。
細木校長から卒業証書を受けた3人はそれぞれ夢や目標を発表。樋口七海さんは「絵の芸術家になることが夢」と話し、丸山萠衣さんは「中学に進んだらクロカンスキーで全中をめざします」と決意。また宮内海くんは「まだ夢は決まってないけど、十日町の役に立つ仕事がしたい」と大きな声で話した。式では、六送会で行う予定だった「お祝いの歌」なども盛り込み、体育館いっぱいに歌声を響かせた。
今年も着物の町らしい華やかな卒業式—。着物を通じ和文化を体験する「きものサークルわかむらさき」が22年間続く十日町小学校(山岸一朗校長)で24日、第73回卒業証書授与式が行われた。
卒業生57人中19人が着物姿で、羽織袴の男子、振袖に袴、編み上げブーツを履いた「ハイカラさん」女子もおり、大人びた雰囲気。わかむらさきは毎年6年生の希望児童が受講し、着付けや茶道を学び、民謡流し等にも参加している。メンバーだった村山玲奈さんは「6年間でわかむらさきの活動などたくさん思い出ができました。小学生の最後に着物を着ることができて感動しました」と明るい表情を見せた。

「いつもと違う式だからこそ」とサプライズの花吹雪で卒業生を見送った芦ケ崎小
サプライズ演出、花吹雪で祝う
津南町63人、栄村5人が学び舎後に
新型コロナウイルスの影響で一斉休校が続くなか、奥信越でも卒業式が行われた。津南町の3小学校の卒業式は24日に行い63人(芦ヶ崎7、上郷5、津南51)が卒業。一方、栄村は18日に行い、栄小を5人が卒業し、自分の夢に向かって新たな一歩を踏み出した。なお津南町は離任式・終業式は中止となっている。栄村は離任式を行っている。
卒業式は在校生なし、来賓も呼ばない時短形式で行った津南町3小。芦ヶ崎小(丸山浩市校長、45人)は、教職員15人余と保護者10人余が見守るなか実施。一斉休校で学校に来られなかったため、式前に急きょ30分余の練習を行い、本番の式典に臨んだ6年生7人。卒業証書を受け取るとそれぞれが「中学では陸上部に入りお姉ちゃんみたいにカッコいい選手になれるよう頑張ります」や「中学では部活と勉強、友だち作りに頑張ります」などと決意表明。締めくくりには同小の大きな特色になっている伝統の龍神太鼓を披露。1ヵ月余練習はなく、ぶっつけ本番だったが同じメンバーで演奏するのはこの日が最後だけあり、熱の入った卒業太鼓を鳴り響かせた。
今月2日から一斉休校となり、小学校生活最後の1ヵ月余を失った今期卒業生。芦ヶ崎小では「何か思い出に残ることを」と教職員の発案で、退場時に卒業生には内緒で花吹雪を舞わせることを決定。式の最後、体育館を後にする卒業生を迎える花道を教職員と保護者が作り、黄色や赤、金銀など色とりどりな紙の花吹雪を浴びせた。真新しい中学生服に身を包んだ子どもたちは、思わぬサプライズ演出にみんな笑顔。半戸咲良さんは「全然知らなかったのでびっくりしたし、嬉しかったです。花吹雪を浴びる卒業式なんてもう二度とないと思います」と笑顔。丸山校長は「いつもと違う式にならざるを得ないなら、いつもと違う、心温まることをしようと思った。小学校最後の思い出として残ってくれれば」と花道で卒業生ひとり一人と握手し、教え子を激励していた。

国重要文化財となる本ノ木遺跡出土物(津南町教育委員会提供、小川忠博さん撮影)

昨秋に国史跡、さらに出土物1296点が国重要文化財となる津南町の本ノ木遺跡(24日)
「本ノ木論争」出土資料 国重文
石器や土器など1296点を指定答申 津南町
あの『本ノ木論争』を生み出した出土物が国重要文化財となる。国の文化財審議会は19日、津南町本ノ木遺跡出土品1296点を国重要文化財に指定するよう文部科学大臣に答申した。津南町の考古資料の重要文化財指定は、堂平遺跡出土物の深鉢型土器2点(2006年)が指定されて以来、14年振り2例目。なお新たな重文が出土した本ノ木遺跡は昨秋に「本ノ木・田沢遺跡群」として国指定史跡となっており、その希少性が改めて研究者の注目を集めている。東京国立博物館では新たな国宝・重文を飾る企画展「新指定展」を4月21日〜5月10日に開催予定で、本ノ木遺跡出土物も展示される。
本ノ木遺跡出土品は石器1214点、土器片66点、剥片9点、石核7点。石器には特徴的な細身の柳葉型の尖頭器(石槍)で『本ノ木型』と言われるものから、横幅の大きいものから多様に出土。同遺跡は64年前の昭和31年(1956年)とその翌年に第一〜二次調査が行われ、旧石器時代の尖頭器と縄文土器が一緒に出土したことから縄文時代草創期の始まりを巡る『本ノ木論争』が勃発したことで知られ、未だに結論は出ていない。一方、2006年から8年間かけ國學院大と津南町教育委員会が同遺跡を再調査し報告書を作成。2017年には第一〜二次調査の出土物を保管していた千葉大から町に出土物が返還され、現在は町教委で保管している。
全国でも出土例はまだ少ない、約1万5千年前の縄文草創期遺跡である本ノ木遺跡。出土の石橋は製作の初期工程のものはないが、完成品や半加工の未製品、破損品があることから、外部から持ち込みがあった石器の仕上げ工程を行った加工場と考えられている。國學院大学生時代から同遺跡調査に関わる町教委・今井哲哉学芸員は「国指定史跡、そして今回の本ノ木遺跡出土物の国重文指定。縄文時代の始まりを研究するのに欠かせないものということを評価頂いた。町としては二つの指定を受け、縄文文化の始まりを象徴する遺跡として、活用を考えたい」と話す。町民俗資料館で同遺跡出土物は5月以降に展示予定だ。
2020年3月21日(土)

関越高速道と北陸自動車道を結び、災害時の避難道路や物資搬送など緊急道路ルートとして重要視する高規格道・上越魚沼快速道の『十日町道路』は1月16日、担当する国交省長岡国道事務所がルート公表し、今年はそのルートの中心線を決め、具体的にどこを通るかが決まる。国道117号との接続箇所にハーフインター(六日町方面)、その先の信濃川寄りに「十日町インター」が設置される。その先は長大橋で信濃川を渡河し、市内吉田地区に入り、国道253号に接続する。信濃川を渡河後の吉田地区では、「ここにもインターを」と『十日町西インター』設置を求める動きが、地元で始まっている。十日町市議会一般質問で明らかになった。
十日町道路『十日町西インター』構想浮上
高規格道 吉田地区・地元推進組織立ち上げ
「千載一隅のチャンス」
吉田地区自治振興会では、すでに各集落代表によるインター推進組織を立ち上げ、今後十日町地域振興局や市と話し合い、取り組みの進め方などを協議する方針だ。地元関係者は取材に対し「十日町地域振興局や市と取り組み方針を話し合ってからでないと、地元としては具体的な話はできない」としている。
市議会一般質問で川西地域の星名大輔市議は「十日町インターの信濃川対岸にもインターができれば交通ネットワーク整備がさらに進むことになる。平成8年頃にも構想があったと聞く。今回、ルート決定を受ける形で吉田地区自治振興会は2月21日、吉田地区にインターをという住民運動を立ち上げている」と地元の動きを取り上げ、市の対応を迫った。
これに対し関口市長は「信濃川の対岸地区と往来できるインター設置は、示された計画にはないが、吉田地区の皆さんから要望があることは承知している」。さらに「十日町道路で信濃川を渡河し両地区間を往来できることは、防災面や利用者の利便性など多くのメリットが期待される。今後市民ニーズなど踏まえ、計画主体の国交省や新潟県と連携していきたい」と方針を話している。また関口市長は「十日町道路は国道253号のバイパスであり、その253号の起点から終点まで指定された意義は大きく、(吉田地区の要望は)十日町西インターとなるが、地域の人が心を一つに取り組むことは意義あること。市も地域と共に国や県に要請していきたい」と積極姿勢を見せている。
吉田地区が求める『西インター』誘致は、同地域の地域づくりにもつながる。人口減少する同地区の再興活動にインター設置運動を連動させ、地域あげての取り組みにしたい方針。3年前に県道バイパス沿いにオープンしたそば店・ABUZAKAの市内外からの誘客効果が具体化しており、地域農産物や交流拠点などインター設置運動と関連づけ、「千載一隅のチャンス」として地域づくり活動として取り組みたい意向で、今後の誘致運動の具体化に大きな関心が集まる。
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十日町道路は、3年前に供用開始した八箇峠道路の上越方面への延長ルートで、八箇インターから道なりに直進しトンネル(1・17㌔)に入り、池之平地区で橋から再びトンネル(2・38㌔)で、麻畑地区で開口部に出て橋となり、すぐに再びトンネル(1・44㌔)に入り、そのまま伊達に抜け、高架のまま国道117号(六日町方面ハーフインター)とJR飯山線をまたぎ、小黒沢エリアに十日町インターを設置し、高架のまま信濃川を渡河し、高島地域でトンネル(1・31㌔)に入り、国道253号・鐙坂トンネルと名ヶ山トンネルに中間で同国道に接続する。このためトンネル4ヵ所6・3㌔(全長の58%)、橋梁7橋1・9㌔(同18%)となるルート。十日町市は4月以降、十日町インター周辺土地利用の検討を地元と共に研究検討する組織を立ち上げる方針だ。
除染土再利用「再考を」、全会一致で意見書
津南町議会、議員発議で国提出
放射能レベル不明確、農地投入の懸念も
来月1日が省令施行とされる福島第1原発事故により放射性物質汚染された除染土を再利用する国の省令に対し、津南町議会は13日の本会議で「除染土再利用の省令案の再考を求める意見書」提出の議員発議を全会一致で決め、今月中に安倍晋三・内閣総理大臣と小泉進次郎・環境大臣に提出する。同省令を問題視する意見書提出は、議員発議した小木曽茂子町議によると全国的に初と見られており、今後、世界最大級の柏崎刈羽原発が立地する新潟県内の他の自治体にどう広がるか関心が集まる。
議員発議で小木曽町議は、「福島第1原発事故で飛散した放射性物質で汚染された土は、危険だからと除去されたもの。それを再利用するということ、そうした考え自体が危険なことであり、危険だから除去した土を再利用するなどあり得ないこと」と国の姿勢を厳しく指摘。さらに「農地で実証実験した安全性を公表しているが、散布した除染土の上に50㌢の覆土をするというが、耕地が災害などで掘り返される可能性もありあまりにも危険性が高い。さらに再利用する除染土の放射能レベルの表示もなく、除染土に何が含まれているか分からない。農地に投入されたら歯止めがかからない」と危険性を強調。
原発関係に詳しい小木曽町議はさらに「危険とされる放射能の世界的な知見は100Bq/㎏以下。だが日本は8000Bq/㎏という。これでは世界中の原発廃棄物が日本に持ち込まれる。福島第1原発事故で出てしまった放射性物質は移動しない事が第一。それを原発設置を許可した国と事業者の東京電力が責任を持って放射能レベルが減退するまで保管するべき」と話し、除染土の再利用は放射性物質の拡散につながり、放射能被爆の危険性を全国に拡散することになるとする。発議採決は全員賛成で決議した。

クラフトビール製造に取り組む岩田社長(右)と樋口副代表

異端のビール、十日町から発信 醸燻酒類研究所
情報通信技術で味覚のシステム化も
クラフトビール(地ビール)界の異端児と呼ばれる海外のビール製造所に熱い思いを抱いた十日町市の幼なじみの青年ふたりが昨年6月、醸燻酒類研究所(ジョークンビールラボ)を創業。ことし5月の連休にはタップルーム(工場内バー)を開業し、7月には自家製造のクラフトビールの販売にこぎつける予定だ。一方でICT(情報通信技術)を活用した新たな味や香りなどの研究にも取り組む方針で、同社では「地元に愛されるビールを造り、またAI技術を活用して味覚を可視化、小規模メーカーの支援にも取り組みたい」としている。
創業したのは、保育園から中学まで中条地区で一緒だったという岩田貴之社長(32)と樋口啓太副代表(32)。岩田社長がビールを製造、樋口副代表がICTを活用した味覚のシステム開発を行う。製造するクラフトビールは一般的なビール製造中に再び麦芽を加える製法で、香りや甘みが強調された濁りビールとなる。日本酒に例えると『にごり酒』といったところだ。
製造担当の岩田社長は、北里大学保健衛生専門学院で管理栄養士の資格を取得。海外地ビール「パンクIPA」に出会って感動、クラフトビールと燻製の組み合わせを追求するため、南魚沼市の醸造所・ストレンジブルーイングで醸造研修を積んだ。
一方、ICT技術でクラフトビールのシステム開発をめざす樋口副代表は、金沢工業大学を卒業後、東京大学学際情報学府で修士・博士課程を修了。東京大学生産技術研究所で特任助教と特任講師を歴任。アメリカ留学中にクラフトビール文化に魅了された。今後、都内のベンチャー企業に勤務しながら進めるという。
事業所は市内5丁目の空き店舗。初期投資は約2800万円で、市の創業支援事業を導入した。1階に300㍑用の発酵タンク5本を設置し、当面は年間6000㍑を製造する。また飲食店を併設し、クラフトビールと燻製を味わえるスペースを設ける。来年5月期の売上高1500万円を見込んでいる。
すでに南魚の工場で製造した新作ビールを昨年12月と今年2月に都内で、十日町雪まつりでも節季市会場で提供、好評を得て自信を深めた。
岩田社長は「これまでと全く違う、甘みと香りが強い濁りビールを提供します。自由なスタイルのビール文化を浸透させ、地域活性化にもつなげていきたい」と話している。
十日町市本町5丁目でクラフトビールを製造する醸燻酒類研究所

過去30年間の平均積雪が3㍍を超え、人口減少率と高齢化率が高く、年間出生率が低い豪雪地の典型といえる『松之山』をフィールドに4年かがりで調査し、その実情分析で「豪雪地のあり方と未来」を住民の声や思いと共にリポートする報告集『豪雪を超えて生きるー十日町市松之山、雪アンケート調査から見えてきたもの』を、地域密着で調査分析活動する「十日町・津南地域自治研究所」が今月発行した。14日の発行説明会で同研究所・齋木文夫所長は「積雪地の未来が見えてきた。それはこの地に暮らし続ける未来である」と語る。報告集では同地での暮らしに魅力を生み出している住人、移住者の地域活動、さらに住民生活を支える行政力の実効性への提言などを取り上げ、「豪雪地の未来」の可能性を示唆している。
豪雪地の未来、暮らし続ける
自治研が報告集「松之山リポート」、貴重な提言も
2008年設立の同研究所(会員40人)。2017年の研究対象を積雪地の人口減少問題に絞り調査を開始。象徴的な地域として松之山を研究テーマにした。過去平均積雪が3㍍超え、人口はピーク時から8割余も減少(2015年国勢調査2073人)、高齢化率51%超など豪雪地の典型とみる。同研究所は「先ず実態を知ること」と2017年、松之山全世帯対象の「雪アンケート」を新潟大むらづくり研究会・伊藤亮司研究室と連携して実施。「雪」は松之山生活に深く関わるため、雪の処理、雪関係の困り事、雪の楽しみ、雪との暮らしなど全781世帯対象に行い50%超の回答を得た。集計結果報告と共に多数の意見も掲載。「豪雪は過疎化の要因になっているが、自然豊かな『故郷』に住みたい若者はいる」など新たな雪国住人への視点も見られる。
さらに行政力のあり方も調査。いまでは豪雪地を支援する県事業になっている『冬季保安要員制度』は、当時の松之山町の訴えが県を動かし、県制度になった経過を紹介。前十日町市議(元松之山町議)村山邦一氏が報告集で記す。冬場の「出稼ぎ」が当たり前の昭和40年代「留守家族の難儀や心配を少しでも軽くできないかとの思いから出たのが『冬季保安要員制度』でした」。昭和50年・1975年12月、制度が県条例化された。
一方で雪処理の行政対応で隣県・栄村の「雪害対策救助員制度」を紹介。担当した桑原加代子事務局長は「全国を調べたが栄村の制度がもっとも充実している」と、実証的に十日町市・津南町を該当し試算的な実現性を数値を示し提言している。
40年余前から栄村が取り組む同制度は「村決算額の1%」を予算化し、2018年実績では冬季雇用20人体制で除雪対象世帯155戸を支援。事業費3584万円で除排雪。報告集では試算し、十日町市は要員285人、3億9650万円(同年除雪費18億4691万円)、津南町は要員60人、6700万円(同1億6610万円)など行政の除雪コスト軽減を示し、加え冬季雇用拡大につながるとする。
調査活動、報告集まとめに連携した新潟大まちづくり研究会の伊藤亮司助教は「松之山の暮らしとその課題を考えることは、積雪地域全体の地域住民の生活を考えることであり、それがそのまま地域づくりであり、まちづくりになる。一方でアンケートの意見にもあるが、雪は資源、財産ということを今冬の少雪は実証している」、さらに「松之山を維持することは、この国全体を守る事にもなる。その意味でも貴重な報告集だ」と評価する。調査活動に参加の学生は今期卒業を迎え、調査活動を契機に卒論で扱った学生もおり、伊藤助教は「今後、この報告集をゼミ活動に活用していく」とする。
◎
『豪雪を超えて生きる』(十日町・津南地域自治研究所、2008年設立)限定千部、1冊千円(税込)。十日町市の各公民館、十日町情報館、津南町公民館、栄村公民館などで扱っている。連絡先・齋木所長℡090-4946-7570、桑原加代子事務局長℡090-4674-8486。

報告集発行を発表する自治研・齋木文夫所長(右、14日)

めごらんど(右黄色建物)近くに造成中の野外広場。防災拠点にもなる

子どもの遊び拠点、防災拠点にも
めごらんど、夏オープンの野外広場
芝生下に貯水タンク、炊き出し準備、日除けテントも
多くの要望に応え完成した屋内こども施設・児童センター「めごらんど」は昨年8月オープン。子どもの遊びの拠点と共に、隣接に造成中の広場が防災対応の場になり新たな野外拠点が誕生する。めごらんどは先月末で約3万人が利用。市外が3割近くで広域利用されている。特に南魚沼市と津南町の利用者が多く市外利用の半分余りで近隣地域の人気スポットになっている。市では年間6万人の利用を見込む。今月9日の市議会、太田祐子氏の一般質問で明らかになった。
めごらんどは旧青少年ホーム跡地、すでに解体した市民体育館近くに事業費6億円余で建設。総床面積1516平方㍍でスライダーやボールプールなど様々な遊具が揃う「あそび広場」、ミニ体育館として利用できる「うんどう広場」、乳幼児が親と遊べる「はいはい広場」、さらに飲食ができる「こうりゅう広場」、勉強や読書などできる会議室など多様なニーズに対応する施設だ。
隣接地で整備が進む野外広場は解体した市民体育館と市民会館跡地に造成する。芝生広場、日よけテント、そりゲレンデ(冬季)、健康遊具、トイレなどで同広場は防災対応も整備。芝生広場地下に100㌧貯水タンクを埋め込み、災害時に煮炊きできる「カマドベンチ」も設置し、同広場がそのまま防災・避難場所に活用できる設備を整える。野外広場は夏休み前オープンの予定。さらに芝生広場には日本さくらの会寄贈の桜18本を植栽する計画だ。
めごらんどは2月末で2万9594人利用。市外7871人(約27%)、うち南魚沼市2259人、津南町1340人。年代別で3歳以上就学前7645人(全体の約26%)が最多。小学生5051人(同17%)、2歳以下4427人、中高生150人など。一日最多入場は昨年10月14日(振替休日)の640人。靴箱が不足したが混雑感はあまりなかったという。大島満センター長は「雨や雪の日は利用が少なめで、ここに来る移動手段がなく、親が来ないと来られないようです。最近、滞在時間が長くなり多くが来場すると混在する可能性もあります」とする。毎週木曜が休館。朝9時開館で小学生以下は親同伴。利用は無料。新年度からセンター長、副センター長、委託職員3人の5人体制で運営。めごらんど℡025-761-7707。